目指すもの
  20世紀後半、我が国は経済的に豊かな国家を目指し急速な発展を遂げました。特に産業界は世界に通用する技術や製品を生産し、その結果私たちは便利で快適な生活を送ることができます。しかし一方で、社会全体を支える構造はさまざまな要素が互いに複雑に関連しあい、その一部分が一時的にしろ機能が止まったときに社会全体に与える影響は、数十年前と比べて計り知れません。
 
 現実に過去10年間わたしたちは、天災や人災によってひきおこされた交通網、エネルギー供給網、情報システム等の切断による大きな社会混乱を経験しています。また、原子炉の事故対策は、当面最も緊急性が高い重要な課題だといえるでしょう。
 
 岩手大学工学部附属金属材料保全工学研究センター(以下、本センター)は、工学的な見地から社会基盤及び自然環境の保全を図り、将来にわたって生命財産を守り、人類の平和に貢献することを目的に掲げ、21世紀の幕開けに設立されました。

 
 
 本ページの構成
 
シンボルマーク
地球を取巻く5色のカラー
紫:真理 青:技術 緑:教育 
黄色:協働 桃:未来
『保全工学』の基本を表現しています。
 特 色
   金属を用いた構造物には人間と同じように寿命(耐用年数)があります。現在の科学技術では、寿命を延ばすことはできても寿命を永久にすることはできません。構造物を人間に例えて平均寿命を80歳とすると、材料の劣化は使用当初より進行し、50歳で亀裂が発生して80歳で壊れます。
 
 世界にはこの寿命予測の研究をしている研究所は沢山あります。しかしながら、これまでの研究は亀裂の発見にとどまっています。金属疲労による事故のニュースが絶えないのは、亀裂発生前でも地震などの大きな衝撃を受けると破壊に至ることがあるからです。これに対して、本センターでは材料使用当初から亀裂発生までの材料劣化を非破壊的に調べ、亀裂発生の時期を予測する研究を行います。
 
 つまり、従来の研究が老化の始まる50歳以上の病気の予防だとすれば、本センターが取り組む研究は、言わば幼児から老年に至るまでの健康管理に相当するものなのです。この先見的な試みは世界的にみても本センターが初めてです。

 
 
1:転移の発生と
増殖
2:転移の固着と
表面への放出
   
3:亀裂発生と
亀裂伝播
4:亀裂拡大と
破断
 亀裂発生の予測
   金属は外部からの力によって、時間とともに内部に「転位の堆積」が起こります。この現象を一般に“金属疲労”と呼び、今後はその経年劣化に研究の関心が高まるでしょう。
 
 岩手大学工学部では、過去30年間にわたり金属材料の劣化の指標である「転位」と「磁性(磁石につく性質)」の研究をしてきました。その結果、材料劣化の状態と磁性との間には密接な相関関係があることが分かりました。つまり、この両者の関係と劣化のしくみを詳らかにすることができれば、金属材料の磁性を計測する事によって内部の劣化を知ることができるのです。
 
 これまで世界中でこのような研究に取り組んできたのは、岩手大学とマックスプランク研究所(ドイツ)だけです。
 
 
   
 本センターでの教育
 

 21世紀は社会構造の保全が新しい学問分野として発展すると予想されます。その中で「保全工学」は誕生したばかりですが、本センターは保全工学を構築していくと共に、その先頭に立って社会に広めていく役割を果たします。
 
 同時に、これまで岩手大学工学部やマックスプランク研究所で進めてきた研究の蓄積を後生に伝え、社会に貢献する若者を育成することも本センターに課せられた重要な使命です。国内外の研究者の協力を得、切磋琢磨しながら研究を進めていく中で、学生たちは深い洞察力、広い視野、豊かな国際性を身につけることでしょう。

 

 
   
 
 パンフレット
  日本語と英語のパンフレットをダウンロードできます。

 

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